Mwea

ケニア最大の稲作地帯ムエア(Mwea)での活動②

KiliMOL代表の大山です。先週もMweaで活動してきました。朝晩は少し雨も降った日もあり気温は20度台前半と肌寒いくらいですが、昼間は30度以上に上がって直射日光の下では汗もかくような気候でした。尚、この辺りでは3月から本格的な雨季に入ります。 1.歩行式田植機のデモンストレーション 月曜日は、ICOSEED向けに歩行式田植機のデモンストレーションを実施。ちょうど在ケニア日本国大使館やJICAの方々が、Mwea Irrigation Schemeで建設中のThiba Dam(ティバダム)の見学でMweaにいらしており、ご案内役の日本工営の柚木さん、Mweaで契約農家から日本米を仕入れているKAI Globalの福居さんとともに、私たちのデモンストレーションにも寄ってくださいました。週末にICOSEED側で圃場を平坦にして田植えがしやすく状態になっているはずでしたが、そうなっておらずデモ前に急いで近くにいる牛を使って圃場を平らにする作業を行い、人力で残っていた藁などを掻き出しました。牛がムチで叩かれて作業をする様子を見て、改めてここはケニアだと実感、道路で運搬作業を行うロバと合わせて、まだまだここでは家畜が活躍しています。 結局、牛を使っても圃場はしっかり平坦にならず、また水も多すぎたため、ここの圃場は使わず別の圃場で実施することに。移動した場所も平坦ではなかったため田植え機での田植えは完璧にはうまくいきませんでしたが、歩行式田植機がどういうものかは見せることができました。遅くとも2,3年後には手植え作業から機械に代わっているでしょう。ちなみに日本では1970年頃から歩行式田植機が急激に普及し始め、その後に乗用式田植え機も普及していきました。 また、ICOSEEDがCounty Government of Kirinyaga(キリニャガ郡政府)の担当者にも声をかけて見に来てくれており、その人たちから上席を紹介してもらえて、木曜日にはオフィスを訪問、面談することができました。 2.トラクターが田んぼでハマった 先週に引き続き、火曜日は34馬力のトラクターで賃耕作業。しかし、ここで文字通り大きな落とし穴が・・・。私はその場に居合わせていなかったのですが、順調にロータリーを掛けていたトラクターが突如沈んでハマってしまったとのこと。駆けつけて見てみると後輪がすでに半分くらい埋まっています。 こうなると脱出は至難の業。トラクターの後輪の外側に大車輪をつけていればもしかしたら何とかなったのかもしれませんが、このあたりの圃場は深くないのでハマらないと考え、しかも一つ一つの区画が小さいので、切り返しのしやすさを優先して大車輪を外していたのでした。どうもがいても自力では出せそうにありません。そして、圃場が辺鄙なところにあるため、救出のために引っ張ってくれるような他のトラクターはすぐに見つかりません。 それでも何とか夕方にクボタの45馬力のトラクターに来てもらえて、チェーンで引っ張ってもらい、泥沼から引き出そうとあれこれ挑戦したのですが、引っぱり出せず・・・。だんだんと暗くなってきて、そのトラクターも帰らなくてはならなくなったため、日没サスペンド。明日は、水気を減らしてトラクター周辺の泥を掻き出せるように圃場の畔の水の排出口を開けて一旦その日は解散しました。 次の日、圃場に来てみると水は思ったほど抜けていません。ここでじっくり圃場を見てわかったのですが、なぜかこの区画では湧水が出ているところがあり、その周辺が柔らかくなっています。これにより水が残り、さらには土の柔らかい部分があることがわかりました。 今日中には脱出させなければと、欧米系の大型トラクター(75馬力)の作業者に何とかコンタクトできて仕事が終わり次第、連絡してほしい旨を伝えて、私たちはトラクター周りの泥や水抜きの作業をひたすら行いました。しかし、その大型トラクターの作業者とは途中から連絡がつかなくなってしまいました。大型トラクターの作業者にコンタクトしていたうちのケニア人スタッフも最初から「あいつらは本当に来てくれるか怪しい」と言っていたので、やはり一見さんお断り的なところがあるのでしょう。 水や泥の掻き出し作業を続けてようやく後輪タイヤの周りの土と水がなくなってきたところで、大車輪を装着して再度脱出を試みましたが失敗。 その後、以前唐沢農機サービスの唐澤社長から教わった「大車輪に棒を突っ込んで地面に刺す方法」の応用編で、アルミはしごを大車輪の下に潜り込ませられるように、大車輪に突っ込む棒をアルミはしごの間に刺す方法で行いました。同時に、周辺にいた大人たちに綱引きのように引っ張ってもらいました。その結果は…。臨場感あふれる以下の動画もぜひご覧ください。 これでようやく脱出成功!周りで見ていた子供たちも大喜びでした!脱出できて本当にホッとしました! とはいえ、これでほぼ丸二日を棒に振ってしまい、改めて賃耕作業のリスクを再認識することになりました。 3.FIELD DAYイベント参加 金曜日は、ICOSEEDとAATF(African Agricultural Technology Foundation)主催のLOWER MWEA FIELD DAYというイベントに参加しました。農業関係者や農家が参加しており、4つの新種のコメのお披露目会です。なんと最大で7トン/acre(≒17.5トン/ha)の収量になるとのこと。ケニアでの平均収量が5トン/haと言われていますので信じられない収量です。 ここではまずケニアでの農業イベントがどのように進められるかを知ることができました。 開始予定時間が午前9時でその後フィールド見学をして10時から説明などが始まる予定でしたが、実際に説明が始まったのは午後1時、なんと3時間遅れのスタートです!日本では信じられませんが、誰もこの遅れに関して気にしている様子はありません。ポレポレ(スワヒリ語で「ゆっくりゆっくり」の意味)の文化が完全に定着しています(笑)。様々な関係団体や企業が順番に前に出て、それぞれが開催者への感謝→自社紹介→スピーチといった順番で話をしていきます。これが延々と続きます。自分は小学校の朝礼の校長先生一人の話でも長くてうんざりしていたタイプなので、この話す人数の多さ、そしてそれぞれの人の長い話にはただただ驚くばかりでした。今更感はありますが、ケニア人はおしゃべりが大好きです。最後の方14:45頃にKiliMOLにも説明の時間が与えられたので、そこでしっかり(話は短くして)アピールしてきました。その後も何人か話は続き、その後集合写真を撮って、最終的にランチが振舞われたのは15:40頃でした。 スピーチの中で印象に残ったのは、ケニアでのコメの消費量が急激に伸びており、国内での生産量も増えているが、消費量にはとても足りず消費量の89%をパキスタンやインドから輸入しているということ、食料の安全保障、及び外貨流出食い止めの観点からも自分たちで生産量を増やしてこの状況を何としても変えていこうという熱い想いでした。KiliMOLも農業の機械化で貢献していきます。 今週もいろいろとトラブルがあり、農業・農機事業の難しさを痛感しましたが、半年前にMweaに来た時よりも明らかにトラクターが増えていたり、Nairobiからの幹線道路の舗装工事が大幅に進んでいたり、Mwea地域内もこれまででこぼこだった道がきれいに舗装整備されていたりと地域の発展を実感しました。この国はまだまだ成長が続くと思います。 (出所:Google Map) 来週はケニア西部のケニア第3の都市・キスム(Kisumu)へ出張してきます。Kisumuに行くのは初めてなので楽しみです!

ケニア最大の稲作地帯ムエア(Mwea)での活動①

KiliMOL代表の大山です。 先週は丸一週間Mweaで活動しました。日本の小型中古農機のアフリカへの輸出を促進するため、事業パートナーの唐沢農機サービスとともにまずはケニア、その中でも首都ナイロビ(Nairobi)から100kmほどにあるケニア最大の稲作地帯Mweaにフォーカスして、営業・販売活動に取り組んでいます。今回はMweaの概要、及び先週のMweaでの活動について書かせていただきます。 1.MweaとはMweaはナイロビから北へ2時間ほどのところにある、ケニア最大の稲作地帯です。最高峰であるケニア山(標高5199m)の南麓に位置し、標高約1000mで、朝晩は20℃、昼間は30℃強の気温です。Mweaの灌漑スキームはMwea Irrigation Scheme(MIS)と呼ばれ、ケニア最大のタナ川(Tana River)の支流シバ川(Thiba River)の水資源を活用した灌漑設備が整備されており、広さは約9,000ha(東京ドーム約1,900個分)、ケニアの米生産量の約6割を生産しています。1980年代から日本政府が無償資金協力、技術協力を開始し、その後も有償資金協力を通じて、現地の稲作関係機関と共に多くの日本人も現地で活動し灌漑稲作の普及、発展に貢献してきました。コロナ禍前までは海外協力隊の方々も多くいらっしゃいました。アフリカでの日本の農業振興面での貢献の大きな成功例の1つとなっており、コロナ禍前はアフリカ各国からの視察も多かったようです。ケニアでは、西部のビクトリア湖周辺でも稲作の灌漑設備の整備が進んでいますが、Mweaをお手本にして「Mweaに続け」という思いでプロジェクトが進められているようです。池上彰さんも2013年頃にMweaをご訪問され、いつも通りわかりやすいご説明をしてくださっていますのでご興味のある方は以下もご参照ください。https://www.jica.go.jp/aboutoda/2013_African_business/vol3/step4_p1.html 2.これまでの活動昨年(2021年)、出張で現地入りしてMweaでデモンストレーションを2回実施しました。3月にはトラクターとコンバインハーベスター、9月には田植え機、小型精米機を実演しました。その様子については以下のYouTube動画をご覧ください。 ① 2021年3月のデモンストレーション ② 2021年9月のデモンストレーション 現在は、まったく機械化が進んでおらず人集めや作業コスト上昇など現地で課題を多く抱えている田植えの機械化が最も現地に貢献できると考え、重点的に営業活動を行っています。 3.本スキームとOUT GROWERSMISには本スキームのエリアとOUT GROWERSという本スキーム外のエリアの2つがあります。割合は8:2くらいのイメージです(詳細地図はこちらをご参照)。今回は、KiliMOLのケニア人スタッフが信頼関係を築いてきた、主にOUT GROWERSのエリアで活動するICOSEEDという地域コミュニティNGO(local community based NGO)を訪問し、今後の協業について話し合いました。 また、今回ICOSEEDからの紹介で賃耕を開始しました。現地では欧米メーカーの大型トラクターによるディスクプラウを使った作業がメインで、ロータリーを使った作業はあまり行われていません。まずは農家の方々に日本の小型の中古農機が十分に活躍できること、稲作の生産性向上に繋がることをしっかり見せていく必要があると考えています。ロータリーをかけている様子を見ていた農地オーナーの女性に感想を聞いた時に見せてくれた笑顔は最高でした。こうやって少しずつ日本の小型農機の有用性が広まっていくと信じています。 4.トラックがハマった。 日本は田舎でも多くの道が舗装されていますが、ケニアでは田舎は舗装されている道の方が珍しいです。今回、トラックで農機を輸送中に段差でハマり動かなくなりました。このトラックは積み下ろしをしやすいようにアウトリガー(アームを伸ばしたり物を吊ったりする際に、車体横に張り出して接地させることで車体を安定させる装置)がついていて、前の方をリフトアップできるようになっているのですが、その分後ろ部分に足が2本ついています。それが段差で引っかかってしまい後輪が浮いてしまって動かなくなってしまったのです。最後はアウトリガーを使って車体をさらに持ち上げて、積んでいた梯子を下に敷いてトラックをその上に降ろし車高を上げて脱出成功。車高の高い大きなトラックを使えばよいではないかというのもあるのですが、そうすると、農機のトラックへの積み下ろしが大変になります。大変なだけでなく積み下ろし時の危険性も増します。なので安全面重視でこのトラックを使っていきたいと思っています。とはいえ、ケニアでは作業場所へのアクセスも大きな問題です。これについてはしっかりとルールを定めて作業を請け負う前にスクリーニングをかける必要があると痛感しました。 久しぶりのフィールドワークで様々なトラブルはありましたが、多くの学びのある1週間となりました。この経験すべてを今後の活動に生かしていきます。 最後におまけの一枚。バナナの木が滑り台になっています。自然があれば人工の遊具なんていりませんね👍 来週もMweaで活動してきます。