今回は先週末2021年11月6日(土)に見学・体験させてもらった馬耕について書きます。
モザンビークでバイオディーゼル事業やモバイルバンキング、デジタルを活用した農業プラットフォーム事業を行っている日本植物燃料(https://nbf-web.com/)の合田さん・尾立さんにご案内頂き、新潟県中魚沼郡津南町で馬耕見学、体験をさせて頂きました。日本植物燃料は一般社団法人馬搬振興会と共同で「株式会社三馬力社」を設立し、馬耕技術を次代に受け継ぐため、馬と人の育成を行いながら、馬耕で田んぼを耕し、無農薬で育てた酒米「五百万石」で極上の日本酒「田人馬(たじんば)」を製造・販売する事業を行っています。
馬耕とは
馬耕とは、読んで字のごとく、馬の力で田畑を耕すこと。馬の後ろに農機具を付けて耕すもので、日本では昔から盛んに行われ、明治以降、馬耕技術の向上と犂(すき)の改良によって全国のコメの収穫量が増大したそうです。また、馬耕に使われる日本の犂の質の高さは他国と比べても群を抜いていると言われています。しかし、耕耘機やトラクターの普及により急速に馬耕は姿を消していきました。
「馬は百姓の神様」と言われ、田畑を耕すだけでなく、馬糞もたい肥として使うことができます。持続可能な農業が求められる世の中になってきた昨今、イギリスやフランス、アメリカなど欧米の国々では、果樹園やワイン畑で馬耕が活用され、注目されています。
馬方・岩間 敬(いわま たかし)さん
皆さんは「馬方(うまかた)」を知っていますか?私は知りませんでした。「馬で貨客の運搬を職業とする人。馬子(まご)。」のことです。馬を活用して木材を運び出す伝統的な技術を馬搬といい、古くから林業の現場で用いられてきました。大型機械が入れない狭い山道でも作業をすることができるため、山を荒らさない、環境にやさしい搬出方法だと考えられています。
今回お会いした岩間さんは馬方。一般社団法人馬搬振興会代表理事であり、株式会社三馬力社 代表取締役でもある、小生と同世代の方。馬搬と馬耕の技術と文化の継承に取り組んでいます。西アフリカ・セネガルでも馬耕指導を実施、畜力技術指導による国際貢献も行っています。前日に庵を囲んでお酒を酌み交わす中で伺った話で最も衝撃を受けたのは、馬は世界共通であり、岩間さんはどんな馬とも話ができ心を通わすことができるということ。実際、2011年イギリスで開催された馬搬(*)の技術大会で岩間さんは現地の馬を使って優勝しました!
(岩間さんが馬耕をする様子)
馬耕の見学と体験
今回、幸いなことにこのように日本の馬耕界を“引っ張っている”岩間さんの馬耕を見学、そして体験するという大変貴重な機会を頂きました。岩間さんの馬耕は非常にスムーズで馬もストレスなく働きます。まさに「人馬一体」の言葉がぴったりでした。
その後私も挑戦させて頂くことに。実際にやってみるとこれが本当に難しい。。。まず自分が声をかけても馬は動いてくれません。岩間さんにお願いして馬に声をかけて頂き、馬が動き出すと、今度は犂の角度のコントロールが難しく、馬についていくのがやっと。下の写真(青いウィンドブレーカーを来ているのが私です)のようにへっぴり腰になってしまい、1列終わって後ろを振り向くとまっすぐとは程遠く、岩間さんの耕した列との間にスペースを残してしまいました。まさに「馬は馬方」(慣れない素人が馬を扱おうとしても馬は言うことを聞かないが、馬方であれば、馬を意のままに動かせる事から「その道の専門家は、専門家であるだけに優れている。何事も専門家に相談することが一番」という意味。)でした。
私の馬耕はうまくいきませんでしたが、今回、馬の力(これがいわゆる「1馬力!」)を体感し、人力とは非常に大きな差があることを肌で感じることができたのは大変貴重な経験でした。そして、この馬耕の伝統・技術は絶対になくしてはいけない、また、日本でも世界でもトラクターのような機械が入れないような山間部も多く、持続可能な農業の観点からもまだまだ馬耕の活躍の場は大きいと感じました。
馬方の岩間さんと、日本植物燃料の合田さん・尾立さんは、新潟県の松代や津南町で馬耕を根付かせようと子どもが馬と農作業にふれる催しを開催しています。嬉しいことに最近では馬耕を学びたい人が全国から集まっていると伺いました。これから彼らの活動を応援していきたいと思います。
(左から、福島さん(商船三井)、大山(筆者)、岩間さん)
<参考>
一般社団法人 馬搬振興会 | https://japanhorselogging.org/ |
日本初 馬耕によるジャパニーズ・テロワールが育む、 日本酒「田人馬」 |
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田人馬 |
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